教育問題のトピックス

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大阪市生野区の学校統廃合「上から」押しつけは適切か

f:id:education2000:20210906070424j:plain大阪市生野区では、区西部の12小学校・5中学校を4校の小学校および4校の中学校に再編して小中一貫教育をおこなう・義務教育学校の設置も視野に入れるとする計画が、2014年に大阪市教育委員会および生野区役所によって出されている。

背景には、当時の橋下徹大阪市長が、市立小学校を3分の2に減らしたいという構想を立てたことがあった。また市政与党の大阪維新の会も、小学校統廃合を支持する方向で動いている。

地域からは反対・疑問の声が出る

しかし統廃合計画には、地域からは強い批判と疑問の声が出ている。

子どもの足で通学に徒歩40分以上かかる場所が出るなどして通学に不便なこと。

学校が遠くなることで街づくりにも支障が出ること。

住宅密集地域でもあり災害時など万が一の際の避難場所がなくなるかもしれないこと。

――といった課題が指摘され、地域合意が得られていない状態となっている。

地域住民からは、拙速な統廃合計画の押しつけは見直すべき・一旦立ち止まって考えるべきとする要望が出され、複数回にわたって大阪市会にも陳情が出されている。

さらには2020年になると、新型コロナウイルスの問題が深刻化したことの関連で、少人数学級・小規模校がソーシャルディスタンスにも有用とすることも指摘されるようになった。その角度からも、拙速な統廃合は見直すべきという指摘が出された。

にもかかわらず、統合新校開設年度だけでなく学校跡地利用構想まで一方的に発表されるなど、行政側の統廃合計画先にありきで進めていることで、混乱に拍車をかけている。

統廃合を条例で強く推進する動き

2020年になると大阪市は、学校統廃合については市主導でおこなえるよう条例を改正する方針を出した。

大阪市立学校活性化条例」を改正し、教育委員会が小規模校の適正規模配置計画・学校再編整備計画を決めると明記した条文を追加するとして、2020年1月に条例改正案を発表し、2020年2月の大阪市会に提出した。

条例改正方針が出された背景には、生野区西部地域での統廃合計画で地域合意が得られずに混乱し「一旦立ち止まって見直すべき」という意見が出ていることを、条例化で上から押しつけることで異論を封じて打開しようとしたのではないかということも指摘されている。

条例は、維新と公明の賛成で2020年2月に成立し、同年4月より施行された。

条例の問題点

文部科学省の学校統廃合の手引きでは、具体的な統廃合には地域合意が重要と明記されている。また従来の大阪市の方針としても「地域合意が重要」とする建前が出されていた。しかしそれを大きく転換する形で、市教委主導での学校統廃合がおこなえる形となっている。

条例では、小学校の統廃合について、学校の適正規模を「12~24学級」と明記した(第16条の2)。

この規模については、大阪市教委の審議会が以前に出した数字を反映していることになる。大阪市教委としては、1学年あたり2~4クラスあるのが適正規模だと考えているということになる。

その上で、学校の適正規模の要件を満たさない・今後も満たす見込みがないとみられる小学校を適正規模配置の対象とし、統廃合ないしは通学区域変更の手法によって、教育委員会が学校再編整備計画を「策定しなければならない」と明記した(第16条の4)。

これでは、要件に当てはまった小学校は機械的に統廃合計画が出され、条例の枠組みとして無条件に進められるということが正当化されることにもなる。

保護者・住民からの意見については、「聴かなければならない」(第16条の7)とは言及されている。しかしこの条文では、「統廃合には住民合意が必要」と明言してきた大阪市教委のこれまでの公式見解から大きく後退することになる。

条例の枠組みでは、統廃合など学校再編は規定事項となってしまうことから、住民からの意見聴取の機会は設けるが、アリバイ的なものとなってしまう可能性が高いということになる。統廃合計画はあくまでも教育委員会主導であり、住民の意見が反映される可能性は限りなく薄くなるものとなっている。

学校の適正規模

学校の適正規模については、「多くの児童と交流する機会が必要」「いじめなどが生じた場合に、単学級だと人間関係が固定して逃げ場がないなどデメリットがあるが、人数が多いとそういったことを避けやすい」「同じ学年担当の教員が授業内容や生活指導などを協議しながら指導できる」などとして出されたものだともされる。それらの主張は、ある一面を反映しているものではある。

しかしその一方で、「一人一人に目が届きやすくきめ細かな指導ができる」「いじめなどもより発見しやすく、よりていねいな指導が可能になる」などの少人数指導によるメリットを指摘する声もある。

学級規模・学校規模については、個別の事情を無視して機械的に線引きできるような内容ではない。

文部科学省大阪市が学級適正規模のラインを設定していることは、そもそもそのラインが妥当なのかという点から問われる必要がある。

少人数の良さと指摘されているもの

少人数学級は、必ずしもデメリットばかりではないという指摘もある。

生野区の統廃合対象となっているある小学校では、「2年生以下は35人学級、3年生以上は40人学級」という大阪市の学級編成基準に従い、1・2年時は2学級でクラスは各20人程度だった。しかし3年に進級した際、全学年の児童が1学級に詰め込まれることになった。そのことで授業中の私語など児童が落ち着きをなくす状況が生まれ、教師も疲弊している状況になってしまったという。当該校では保護者らが2学級に戻すよう求める署名を集め、2020年2月に市会に提出した。

また2020年に新型コロナウイルス問題が深刻化し、分散登校などがおこなわれたことについて、少人数学級のメリットも指摘された。

少人数校ではそもそも分散登校の必要がなかったことが指摘された。

また前述の1学級に詰め込まれた学校では、分散登校でクラスの人数が減ったときは、児童が落ち着いた様子を見せ、また教師も一人一人の児童の状況に目が届きやすくなったという指摘がされたという。

この角度からも、小規模校だから必ずしもデメリットというわけではないという指摘が出された。

小規模校=デメリットという一面的な見解ではなく、こういうメリットについてもみていかなければならないように感じる。

統廃合の是非は住民合意で

一般論としていえば、学校統廃合は機械的におこなうべきではない。

仮に統廃合を検討する段階になったとしても、関係者間でしっかりした合意が必要になる。少なくとも、関係者の合意なしに行政主導で強引に進めるようなやり方は、適切だとは思えない。

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